このあいだ大河くんを語ったときに、
自己肯定感が低いという話を
したのですが、そこに関しては
映画「十二単衣を着た悪魔」の
伊藤雷も負けてはいません。
というか、
健太郎くんの演じる人たちって、
自己肯定感低い子多いですよね。
映画「のぼる小寺さん」の近藤くんもそうだし、
映画/ドラマ「覚悟はいいかそこの女子」
の律くんにもその気配が。
でもみんな低いままでは終わっては
いなくてどんどん変化していくところが
また魅力なんですよね。
*****ネタばれあります*****
伊藤雷はまさにその象徴。
現代ではできのいい弟と自分とを
比べてはひがんでしまうダメ青年。
その彼が源氏物語の世界にタイムトリップし、
稀代の陰陽師として活躍することにより
自分の居場所を見つけていきます。
でも源氏の世界でいくら称賛されても、
それは現代から持って来た薬や
未来を描くあらすじ本のためであり、
自分の本当の力ではないと感じている雷。
いくら周りが彼を認めても、
自分自身が自分を認めてあげることができない。
それを象徴するのがこの言葉です。
「生まれ変わってもまた人間になりたい。
他人をねたんだりひがんだりしない。
今よりちゃんとした
少しは人の役に立つ人間に」
引用:映画「十二単衣を着た悪魔」
もう一度やり直したいんだなぁって。
運命の相手倫子ちゃんとの
幸せな時間の真っただ中なのに、
こう思ってしまう雷。
悩みの深さを感じてしまいます。
それを聞いた倫子はこの言葉を返します。
「恨み言を言っても何も変わりませぬ。
同じ生きるなら、私は
…自分を好きでいとうございます。」
引用:映画「十二単衣を着た悪魔」
強い。
倫子の生まれ持った容姿は醜い。
源氏の世界では、
“女性は男性に好まれるのが一番の幸せ”という考え方。
醜いというだけで、
さげすまされてきたはずなのに。
その中でこう言い切れる倫子は
本当に強いと思う。
それだけ辛い思いをしてきたのだろうね。
人は辛い思いをした分だけ
強くなれるってことなのかしら。
強がりではなくて、本当に強くなれる?
雷も“倫子は強いね”と。
その言葉に倫子は泣いてしまいます。
「倫子は雷鳴様に出会ってから
弱くなりました。」
引用:映画「十二単衣を着た悪魔」
これはどういう意味なんだろう。
一人で生きていたときでも
自分を好きでいたいという信念を
貫いてきた倫子。
自分を愛してくれる雷鳴に出会って、
さらに強くなれそうなのに。
自分以外にも自分を認めてくれる人が
いれば最強のはず。
でも弱くなったって思うんだよね。
それは雷鳴を失うのが怖いからかな。
自分を好きでいたいという気持ちに
偽りはないけれど、
容姿が醜いということは事実。
それ以外のところでも、
突然雷鳴に嫌われるかもしれない。
自分が自分らしくいつづけることより
雷鳴に愛される自分でいたいと願う
気持ちに弱さを感じてしまったのかしら。
私は弱くなったという倫子も
また強いと思うし、
この言葉の深意は
きっとまだ理解しきれていない。
でも雷にはきちんと伝わっている。
「倫子は弱くなったんじゃない。
幸せになったんだよ。」
引用:映画「十二単衣を着た悪魔」
このバックハグは最強。
雷にさえ伝わっていればいいか。
そして倫子の旅立ちの時、
この言葉を雷に遺します。
「倫子を好きでいてくださった分、
ご自分を好きになってください。」
引用:映画「十二単衣を着た悪魔」
雷は倫子の弱さを理解していた。
倫子は雷が自分を認められない苦しみを
理解していた。
こんなにお互いをわかりあい、
思いやれる二人なんて他にはいない。
チェリーの調べに乗った
二人の幸せな時間を
冷凍保存してしまいたい。
そして円盤になって返ってきてください。