つれづれなるままに~じゃないけどかたりたい

映画やドラマについての思いを語ります。伊藤健太郎くん多めです。

十二単衣~自分を好きでいるという強さ~

このあいだ大河くんを語ったときに、

自己肯定感が低いという話を

したのですが、そこに関しては

映画「十二単衣を着た悪魔」の

伊藤雷も負けてはいません。

 

というか、

健太郎くんの演じる人たちって、

自己肯定感低い子多いですよね。

映画「のぼる小寺さん」の近藤くんもそうだし、

映画/ドラマ「覚悟はいいかそこの女子」

の律くんにもその気配が。

 

でもみんな低いままでは終わっては

いなくてどんどん変化していくところが

また魅力なんですよね。

 

f:id:konohaz:20210506224727j:plain

出典:映画「十二単衣を着た悪魔」公式Twitter

 

*****ネタばれあります*****

伊藤雷はまさにその象徴。

現代ではできのいい弟と自分とを

比べてはひがんでしまうダメ青年。

その彼が源氏物語の世界にタイムトリップし、

稀代の陰陽師として活躍することにより

自分の居場所を見つけていきます。

 

でも源氏の世界でいくら称賛されても、

それは現代から持って来た薬や

未来を描くあらすじ本のためであり、

自分の本当の力ではないと感じている雷。

 

いくら周りが彼を認めても、

自分自身が自分を認めてあげることができない。

 

それを象徴するのがこの言葉です。

 

「生まれ変わってもまた人間になりたい。

 他人をねたんだりひがんだりしない。

 今よりちゃんとした

 少しは人の役に立つ人間に」

引用:映画「十二単衣を着た悪魔」

  

もう一度やり直したいんだなぁって。

 

運命の相手倫子ちゃんとの

幸せな時間の真っただ中なのに、

こう思ってしまう雷。

悩みの深さを感じてしまいます。

 

それを聞いた倫子はこの言葉を返します。

 

「恨み言を言っても何も変わりませぬ。

 同じ生きるなら、私は

 …自分を好きでいとうございます。」

引用:映画「十二単衣を着た悪魔」

  

強い。

 

倫子の生まれ持った容姿は醜い。

源氏の世界では、

“女性は男性に好まれるのが一番の幸せ”という考え方。

醜いというだけで、

さげすまされてきたはずなのに。

 

その中でこう言い切れる倫子は

本当に強いと思う。

 

それだけ辛い思いをしてきたのだろうね。

 

人は辛い思いをした分だけ

強くなれるってことなのかしら。

強がりではなくて、本当に強くなれる?

 

雷も“倫子は強いね”と。

その言葉に倫子は泣いてしまいます。

 

「倫子は雷鳴様に出会ってから

 弱くなりました。」

引用:映画「十二単衣を着た悪魔」

  

これはどういう意味なんだろう。

 

一人で生きていたときでも

自分を好きでいたいという信念を

貫いてきた倫子。

自分を愛してくれる雷鳴に出会って、

さらに強くなれそうなのに。

 

自分以外にも自分を認めてくれる人が

いれば最強のはず。

 

でも弱くなったって思うんだよね。

 

それは雷鳴を失うのが怖いからかな。

 

自分を好きでいたいという気持ちに

偽りはないけれど、

容姿が醜いということは事実。

それ以外のところでも、

突然雷鳴に嫌われるかもしれない。

 

自分が自分らしくいつづけることより

雷鳴に愛される自分でいたいと願う

気持ちに弱さを感じてしまったのかしら。

 

私は弱くなったという倫子も

また強いと思うし、

この言葉の深意は

きっとまだ理解しきれていない。

 

でも雷にはきちんと伝わっている。

 

「倫子は弱くなったんじゃない。

 幸せになったんだよ。」

引用:映画「十二単衣を着た悪魔」

  

このバックハグは最強。

雷にさえ伝わっていればいいか。

 

そして倫子の旅立ちの時、

この言葉を雷に遺します。

 

「倫子を好きでいてくださった分、

 ご自分を好きになってください。」

引用:映画「十二単衣を着た悪魔」

  

雷は倫子の弱さを理解していた。

倫子は雷が自分を認められない苦しみを

理解していた。

 

こんなにお互いをわかりあい、

思いやれる二人なんて他にはいない。

 

チェリーの調べに乗った

二人の幸せな時間を

冷凍保存してしまいたい。

 

そして円盤になって返ってきてください。