つれづれなるままに~じゃないけどかたりたい

映画やドラマについての思いを語ります。伊藤健太郎くん多めです。

冬薔薇~1薔薇目~

出典:映画「冬薔薇」公式Twitter

 

2022年6月3日。

映画「冬薔薇」封切。

阪本順治監督作品、主演伊藤健太郎

こんなに封切の日が待ち遠しかった映画は

初めてです。

群像劇ということで、

多種多様な登場人物の目線で

観ることができる作品。

 

まずはやっぱり主役の淳から。

 

思いっきりネタばれしますので、

ご注意ください。

 

*****ネタばれあります*****

試写会や完成披露上映会を

観た方からの感想には、

切ないバッドエンドといったものが

多く見受けられた。

阪本監督自身も、

「淳は自分の責任で自ら落ちていく人物」

と語る。

 

正直、バッドエンドは大嫌い。

お花畑でも単純でも

芸術性に欠けていてもいいから、

ハッピーエンドが好き。

何かとしんどいことが多い社会で

生きているのだから、

映画の世界の中では楽しくしあわせでいたい。

 

とはいえ、

伊藤健太郎復帰作を

観ないわけにはいかないので、

覚悟を決めた。

 

鑑賞後、私はバッドエンドとは思わなかった。

そして淳が堕ちていったとも思わなかった。

 

どう受け取るかは観ている側次第。 

明瞭簡潔とはほど遠いラストシーン。

 

監督自身はさらにこうも言っていた。

「淳と父は最後まですれ違った」

 

そうとも思わなかった。

 

確かに淳が何か言ってほしいと詰め寄ったとき、

それでも父親が逃げたのは事実。

 

あのとき

”兄の死を責めているわけじゃない”

と言える

淳はちゃんと気遣いもできる人。

たまに出る無神経発言は致命的だけれども、

一切できないわけじゃない。

 

そして彼は逃げずに気持ちをぶつけた。

まだまだ幼いけれども、

彼なりにいろいろ考えているのです。

 

お父さんはただ驚いたのじゃないのかなと。

嫌なことから逃げてばかりの

ろくでなし息子だと思っていたのに、

突然真面目に向き合ってきたから。

 

だから横須賀から旅立とうとする

淳に電話をかけた。

そして淳も、神棚の写真を見たことを伝えた。

 

これは通じ合ったでしょう。

 

「こちらからは連絡しない」

の父親の言葉は、旅立つ息子へのエール。

 

そして公衆電話からの息子の電話は

心配しているだろう両親への気遣い。

 

自分のことを心配してくれているって

信じられるようになったから

便りをよこすのです。

 

っていうのは、ハッピーエンド信奉者の

ゆがんだ目線かなぁ。

 

現実は、倉敷でがんばっていると

両親が信じている淳は

倉敷では暮らしていない。

 

また美崎のもとに戻り、

反社会的なことをやっているのかもしれない。

きっと両親が望む姿ではない。

 

それでもただ寂しいから誰かといたくて、

周りに流されるまま

半端なことをやっていた淳とは違う。

自らの意思を持って生きている。

 

親友だと思っていた友利に裏切られた淳。

ひとりぼっちになってしまったとき、

美崎は手を差し出した。

 

ひとりぼっちがたまらなく耐えられない淳なのに、

一度はその手を握らなかった。

そこに彼の意思がある。

 

もう流されないと。

今のままじゃダメだと。

 

サングラスを受け取ったかどうかは

わからないけれど、

もし受け取っていたとしても、

前のように美崎に

媚びへつらうことはなかったはず。

 

 

そして、

ちょっとぶっとんだ説かもしれないけれど・・・

 

私、美崎は

もうこの世の人間ではないと思っています。

 

美崎の育ってきた環境はわからないけれど、

きっと淳と同類。

愛に飢えた人。

そして、ずっと大切にしてきた妹と玄が消えた。

美崎と玄の関係の微妙さは

また別の機会に語るとして・・・

 

自暴自棄になったのじゃないかなと。

 

そうじゃないと、

横浜のバーから身一つで

冬空に追い出された淳の居場所が

美崎にわかるはずがない。

 

そして

「ダチだろ」

この一言。

 

淳が友利から

「ダチじゃないから」

と言われたことは知らないはずなのに、

今この言葉が出るって。

しかも美崎からはまず出てこない言葉のはず。

ずっと淳を見てきたかのよう。

 

美崎はひとりぼっちになった淳を

一人にしたくなかったのかもしれない。

 

別に霊界に連れ去ろう系の

ホラーな話ではなくてね。

 

淳の寂しさを実は一番わかっていたのは美崎で、

自らが去ったあとも気にかかっていた。

少しでもその寂しさから救ってあげたかった。

だからサングラスを渡した。

ひとりではないよと。

 

ん?なんか美崎がいい人になってきた。

違うな・・・

美崎は気の毒な人ではあるけど、

卑怯なところは変わらない。

美崎はやっぱり

淳を闇の世界に引きずり込む気がする。

 

一人は嫌だから淳も道連れ。

一人で立ち直ろうなんて許せない。

 

でもそれに抗って、

ちゃんと自らの力で生き続けている姿が

最後のシーンでは見えたと。

 

1回目の鑑賞では、

 

”美崎とは傷のなめあいで、

 淳は差し伸べられた手を握って

 また美崎の言いなりになってしまった。

 でもひとりぼっちよりはよかったよね”

 

と思っていたけれど、

数回観た後の現在地はここです。

まだこれから変わるかもしれません。

 

淳の目線から語るつもりが、完全に逸れました。

一人の目線よりも

シーンで語る方が語りやすいのかも。

 

もうなんか語りたいことが

たくさんありすぎるので、

特にテーマは決めずに、

つれづれしたいと思います。