つれづれなるままに~じゃないけどかたりたい

映画やドラマについての思いを語ります。伊藤健太郎くん多めです。

冬薔薇~3薔薇目~

出典:映画「冬薔薇」公式Twitter

 

語っても語りつくせない

映画「冬薔薇」

 

でも淳のことを

ほとんど語ってない気がする。

 

なので、次は淳。

 

*****ネタばれあります*****

 

淳の登場シーン。

主役だけどなかなか出てこない。

 

そして突然の

スローモーションの

振り向き姿。

 

やっと出てきたーという気持ちとともに、

すでに目が死んでいるなと。

 

”ろくでなし”という事前情報による

固定観念でそう見えたのかもしれない。

 

でもそのあとの、

走る姿もやっぱりへっぴり腰。

小者感が半端ない。

 

そして極めつけがトイレのシーン。

家業はダメだから、アパレルで勝負する。

成功するなんて余裕でしょっていう

あの態度。

クズだわ…。

というより、世間知らずのただのアホ。

 

玄さんじゃなくてもあきれるなって。

 

いくら伊藤健太郎が演じるとはいえ、

この主人公のことを

好きになれるのかなと不安満載。

これから何回も観に来る予定だけれど、

大丈夫なのかと。

 

ただ気になったのは、

玄に置いて行かれて一人病室に戻る廊下。

その表情がなにか違う。

何かを考えているけれど

捨て猫のよう。

 

クランクイン初日、

阪本監督から伊藤健太郎への指示は

”余計な仕草はいらない”と。

 

これを聞いたとき、正直なところ、

それは嫌だと思った。

 

私は伊藤健太郎の台詞のない

目の仕草が

たまらなく好きなのに、

それを封印する気なのかと。

 

でもこれは勘違いでした。

 

余計な仕草というのは、

目を動かすなというわけではなくて、

淳が自然にする仕草以上のことを

付け加えるな

 

”淳そのものであれ”

ということだったようです。

ごめんなさい。

 

廊下を歩く淳が何を思っていたのか、

そのときはわからなかったけれど、

話が進むにつれてわかってきた。

 

”また一人になった”

 

何が悪いのかはわからないけれど、

気づけばいつも一人。

自分を大切に想ってくれる人は

誰一人いない。

でもそれを認めたくないから、

考えないようにしている。

 

それが渡口淳。

 

だから虚勢も張ってしまう。

従兄の貴史には自分の悪行を

自慢げに話す。

 

それを聞かされる方の気持ちなんて

全く考えてもいない。

 

ひたすら自分の方を向いてほしいから、

ただただ自己アピールをし尽くす。

 

こんな人、近くにいたら嫌だなと思った。

うっとうしい。

 

でも澤地さんは淳の夢を信じて

支えようとしてくれたし、

友利くんもうっとうしいと

思いながらも

心配はしてくれていた。

 

淳が少しだけ変われば、

きっとひとりになることはなかった。

 

澤地さんの職業を聞くという

考えすら一切出てこなかった淳。

自分に関心を持ってほしいなら、

まず相手のことにも

関心を持たないと。

 

人と人とは

持ちつ持たれつお互いさま。

 

父親が倒れた友利くんにかけた

無神経な言葉はちょっとわかる。

 

あの世代だと

まだ親世代も元気だから、

倒れたと言われても

何を言っていいのかわからなかった。

 

それでつい茶化してしまう。

 

人生経験だな。

 

もしも自分が相手と

同じような立場になって

こういうことを言われたとしたら

どう思うか。

 

そんな自問自答を繰り返しながら

人は人と接している。

 

何度も失敗するけれど、

そのたびにちょっぴり学習もして。

 

淳はそのすべてから逃げていた。

 

「考えることをやめる」

それが淳を形成している

性格のすべて。

 

考えないから、学ばないし、

人を傷つけてはひとりになる。

 

もし淳がこのままなら、

この映画は

ただのクズの物語で終わってしまう。

 

でも淳は

少しずつ考えることを始めた。

 

元々性根が腐った人間じゃない。

 

盲目の男性に言われた言葉。

「謝らないんじゃない、

 謝れないんだ」

 

あまりに核心をついているから、

逆ギレしそう。

 

でも淳は戻って、きちんと謝った。

自分の非を認めることができた。

 

達ちゃんにも

自分が酷いことをしてきたと

言葉にすることができた。

 

そして母親に言われた

「もったいない」

 

もちろん

まだまだ甘さは抜けきらない。

実績もないのに、

友だちなら雇ってくれるなんて

思いこむんじゃないよ。

 

でも横浜のバーで友利くんに

留守電を入れた後の淳。

 

一生懸命考えている。

 

なんで電話に出てくれないんだろう。

もし迎えに来てくれなかったら

どうしよう。

 

きっといろいろ…。

 

1回目に観たときは、

ずいぶんと長いシーンだなと

思ったけれど、

結末を知ってから観ると

 

あの長さは

必要不可欠な時間なのだと

わかった。

 

他にも言葉はない場面で

淳から伝わってくることが

たくさんある。

 

やっぱり伊藤健太郎の芝居

大好きだなぁ。

 

最後、頼ろうとした友だちから

手を振り払われた淳。

 

寒空の下でひとりぼっち。

肩を震わせて泣くシーンは

たまらなく切ない。

 

あのとき

淳は何を考えていたのだろう。

 

友利くんを恨んでいたか。

自分の振る舞いを反省していたか。

親のことを考えていたか。

 

ここでも観客に委ねられた。