つれづれなるままに~じゃないけどかたりたい

映画やドラマについての思いを語ります。伊藤健太郎くん多めです。

サヨナラまでの30分

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出典:映画「サヨナラまでの30分」公式Twitter 

最近、DISH//の「猫」にハマり、北村匠海の歌声が聴けそう

&ドラマ「仰げば尊し」を観て、新田真剣佑も気になるという理由から観た映画。

 

あらすじから真剣佑が亡くなっているというのはわかっていたけど、

やっぱり冒頭で幸せな思い出を辿ったあと突然亡くなってしまうのは切ない。

でもカセットテープという設定だからもっと昔の時代の物語かと

思い込んでいたけれど、21世紀の若者たちのお話だったのね。

 

カセットテープというだけで、なんだか懐かしい感覚が戻ってくる。

ウォークマンだし。

「カセットテープは上書きされても元の記憶が残っている」

すべてが心に刺さる感じ。

昔ってこうだったよね。

すべてのものに何か体温のようなものが残っていて、消え去らない。

昔を懐かしむ年寄りみたいだけど、デジタル化した現代にはない、

やっぱり大切なものってあったと思う。

 

正反対の性格な二人が体を共有して過ごす時間。

今の社会をうまく生きられない颯太の体を借りて昔のバンドメンバーと過ごすアキ。

アキはどうしたかったんだろう。

颯太の人生を奪おうとしているわけでもない。

カナに音楽を奏でてほしくて笑顔を取り戻してほしいだけなのか。

 

アキは死んでしまったことが悔しくて仕方がないはずだし、

現実を受け入れられないはずなのに、いつも笑顔で明るい。

笑顔なだけに自分の死を受け入れるツラさや切なさが伝わる気がする。

 

「俺に越えられない壁はない」

って自分に言い聞かせて進み続けているけど、

ゴールが見えなくて迷っているのだと思う。

カナに笑顔が戻り始めて颯太とキスしようとする姿を眺めるアキは

もう見ていられなかった。

 

そして颯太はバンドメンバーと過ごすうちに人と一緒にいる喜びや

音楽の楽しさを感じて変わっていく。

そしてアキが入れ替われる時間も短くなっていく。

 

一見颯太の体をアキが乗っ取ってしまう物語のように見えて、

実際はアキの過ごすはずだった人生を颯太が乗っ取ってしまう物語。

 

二人ともお互いを乗っ取る気なんてまったくなくて、共存したいと思ってる。

共存できないなら自分の方が消えていいと思ってる。

優しいね。

 

ラストシーンで颯太の体を借りたアキが

「アキを上書きしよう」と言ったとき、もう切なくて、切なくて・・・。

 

やっぱり人は生きていないといけないんだよ。

命って本当に大事。

もちろんアキの肉体は失われたとしてもアキの曲や記憶は

きちんと残っているんだけど。

それでも生きて人生を楽しんでほしかったと思う。

生きているからこそ未来があり、前に進めるんだから。

 

全体的にノスタルジーとやさしさがあふれている作品で、

カナが作り続けるスープは温かい。

恋人を亡くした娘や社会にうまくなじめない息子を見守る親の目線も温かい。

古本屋の雰囲気や絵本もいい。

21世紀なんだけれども、時代を超越した空気感。

だからこそアキもこちらの世界に存在することができたのかもしれない。

 

全編に流れる曲の数々も本当に素敵で、

特にアキと颯太の「Stand By Me」は一度聴いただけで心に残った。

サントラも借りて、ずっと聴き続けている。

 

切ないし悲しいんだけれども、すごく優しくて、

観終わったときに気持ちが穏やかになる映画でした。

この映画は何度でも観れる。