つれづれなるままに~じゃないけどかたりたい

映画やドラマについての思いを語ります。伊藤健太郎くん多めです。

十二単衣~誰かを想う気持ちを大切にするのが雷~

女の子をとっかえひっかえしていると

言っていた実くんの言葉から

思い出したのはあの方のお言葉。

今日は映画「十二単衣を着た悪魔」

を語ります。

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出典:映画「十二単衣を着た悪魔」公式Twitter

 

*****ネタばれあります*****

光の君を想うあまりに

正妻を呪い殺したと噂され、

都を去ることになった六条御息所

 

彼女について弘徽殿女御さまは

このように言い捨てる。

 

「御息所様も頭の悪いことを。

 男と女のことは人生の彩りに

 過ぎぬもの」

出典:映画「十二単衣を着た悪魔」 

 

実くんも、男と女のことは彩りのように

思っていたかも。

 

この女御さまの言葉に反応する雷が

たまらないのです。

 

倫子と風子を失い

自らの心をも失ってしまった

雷の瞳に光が宿る瞬間です。

 

「そうでしょうか。

 私は御息所様を愚かだとは思いません。

 たとえ

 どんなにみじめな結果になろうとも、

 私は魂が抜けるほど

 誰かを想いたいです。」

出典:映画「十二単衣を着た悪魔」

 

雷の言葉は止まらない。

 

「誰かを想う気持ちが

 その人自身や生き方を

 輝かせることもあります。

 哀しみや苦しみを

 喜びに変えることもできます。」

出典:映画「十二単衣を着た悪魔」

  

雷と倫子には別れのときが訪れてしまい、

胸が張り裂けるほどの

哀しみと苦しみの中に雷はいる。

 

それでも雷は倫子との出会いを

決して後悔してはいない。

倫子との出会いは喜びだと。

 

倫子と出会わなければ、

こんな哀しみを味わうことは

なかっただろうに。

 

それよりも倫子と過ごした

幸せな時間の方が大切なんだね。

 

凄いことだと思う。

 

私ならそんなに苦しむのであれば、

最初から何もなかった方がいい

と思ってしまうかもしれない。

記憶を消し去ったほうが楽になれる。

 

でも雷は決してそうは思わない。

倫子と共に強くなった人だから。

 

弘徽殿女御さまは

そこまで想える相手とは

巡り合わなかったのかもしれないけれど、

雷の想いは十分に伝わっていた。

 

弘徽殿女御さまは別れの挨拶に訪れた

六条御息所にこう告げる。

 

「御息所様は光を心から愛し、

 輝きを手に入れられた。

 身の丈に合ったことだけをして

 傷つかぬように生きることなど

 小者のすること。

 

 身の丈に合わぬものを追い求める者こそ、

 輝きを手に入れることができるのです。」

出典:映画「十二単衣を着た悪魔」

  

“恋だの愛だのは人生の彩りに過ぎない”

と語ってきた弘徽殿女御さまが、

人を想うことによって

”輝きを手に入れられた”と語る。

 

女御さまは何ものにも影響されない。

自分の信念からは決してブレない女性。

なのに、

雷のこの想いは受け入れた。

 

雷は他の人たちと何が違うのだろう。

 

女御さまの目には、

雷も身の丈に合わぬものを

追い求めているように

見えていたのだろうか。

 

源氏の世界に飛ばされた当初、

あらすじ本と現代薬を利用して

稀代の陰陽師を装うことで、

自らの生きる場所を得た雷。

 

自らの能力とは釣り合わない偽りの姿。

 

源氏の世界で生きていく中で、

陰陽師として、倫子の夫として、

真っすぐに生きていく自らの姿を

追い求め続けた。

 

倫子と共に生きる雷は偽りの姿ではなく、

雷そのものとなった。

輝ける真の存在となった。

 

陰陽師としての力が、

己の実力ではなかったということを

女御さまは知るすべもないけれど、

変わっていく雷の姿に

何かを感じていたのかもしれない。

 

雷が必死で何かを追い求め続けて

輝きを手に入れていく姿を

女御さまはずっと見つめ続けていた。

 

そして極めつけの一言。

 

「つまらぬものに負けてはなりませぬぞ」

出典:映画「十二単衣を着た悪魔」

  

”つまらぬもの”というものが何なのか。

受取り方は人それぞれ。

 

噂話をする人のことなのかもしれないし、

それ以外のものかもしれない。

 

でも言えることはただ一つ。

 

何かを掴み取ろうと必死になる人を揶揄し、

自分は何もしない。

相手の立場に立って考えることもできず、

他人のことを思いやれない者は

”つまらぬもの”です。

 

そんなものを気にかけている時間は

無駄だなと。

 

その言葉を御息所にかけた後、

女御さまは雷に微笑みかける。

やさしい姉のようでもあって、

少しあどけない幼女にも見える微笑み。

 

雷の前では弘徽殿女御さまも

あらゆるものを一人きりで背負う

太后ではなく、

ただの一人の人間となれるのかもしれない。

 

恋愛感情では決してないのだけれど、

深い信頼関係。

人間愛のようなものが

二人の間にはあるのだなと。

 

雷が源氏の世界で生きていく上で

女御さまの存在は

救世主のようなものであったけれど、

女御さまにとっても

雷の存在は救いだった。

 

雷が源氏の世界に導かれたのは

偶然でも奇跡でもなく、

必然だったのだと思う。